目の定期検査のすすめ

日本眼科医会常任理事 大塚眼科病院副院長 松下 卓郎

「目は大切です」。これは誰もが思っていることでしょう。しかし、いつ視力を損なうような目の病気にかかるかは分かりません。一方で、最近の眼科学の進歩によって、これまで不治の病であった多くの目の病気が、治療できるようになってきました。ただし、その恩恵を受ける為には早期発見・定期検査が大切です。

このホームページは、主だった目の病気の早期発見・定期検査のポイントを分かりやすく説明しています。きっと皆さんのお役に立つことでしょう。

賢く病気と付き合っていって、手遅れにすることなく、適切な時期に最善の治療を受けるようにしてください。自分の目を守るために。

人間の情報の約80%は目から入るといわれています。人生の後半を豊かに過ごすためにも、自分の目を大切にしなければなりません。

現在、中高年の失明原因の1位は緑内障、2位は糖尿病網膜症で、夜盲を来す網膜色素変性症、最近増えている加齢黄班変性がそれに続きます。いまだに治療方法が確立していない網膜色素変性症以外は、早期発見・早期治療で進行を遅らせ、失明を防ぐことができるようになってきました。

失明原因としては多くありませんが、網膜剥離や白内障も視力を低下させる重要な病気です。治療法が進んで、手術で改善したり、失明を食い止めることができるようになりました。

中高年になると、前のページで述べたような様々なトラブルが起こってきます。そのままにしておくと視力が障害され、最悪の場合は失明という事態になりかねません。40 歳を過ぎたら眼科専門医による定期検査を受け、目の健康をチェックしてください。

失明原因の第1位は緑内障

第2位は糖尿病網膜症、第3位は網膜色素変性症、第4位は加齢黄斑変性と続きます。

中江公裕、他「視覚障害の原因の実態」2001~2004年 全国調査より

目はカメラと構造が似ていて、水晶体はレンズに、網膜はフィルムにたとえられます。外からの光は、角膜と水晶体を通って硝子体を通過し、網膜に像を結びます。さらにその像が視神経によって脳に伝わって、私たちはものを見ることができます。

※視神経が眼球と繋がっている部分を眼底側から見たところを視神経乳頭といい、ここで視神経の障害をチェックします。

目のしくみとカメラ

目の角膜・水晶体はカメラでいうとレンズ、目の網膜はカメラでいうとフィルムの役割に当たります

視力検査 裸眼視力の他、メガネやコンタクトで矯正した視力も測って、視力の状態を確認します。
眼圧検査 正常値は 10 ~ 21mmHg と言われていますが、個人差があります。
視野検査 視野が欠けていないかみる検査です。
眼底検査 視神経や網膜の状態をみる検査です。必要ならば瞳を広げて、網膜の隅々まで検査します。
細隙灯顕微鏡検査 眼球の表面や水晶体や硝子体を調べる検査です。状態によっては、より精密な検査、特別な専門医への紹介もあります。

視神経が障害され、視野(見える範囲)が欠けて見えにくくなり、進行すると失明します

目の球形を保つ力を眼圧といい、眼圧が高くなると視神経が圧迫されて少しずつ障害され、視野が欠けていきます。日本人では、40歳以上の約 20 人に 1 人の方が何らかの緑内障状態であると推定されています。

眼科の眼底検査

視神経障害は視神経乳頭の萎縮(陥凹拡大)の形で現れます。眼科専門医は眼底検査で視神経乳頭陥凹を正確に判断します。健診の眼底検査で緑内障疑いと指摘されることがありますが、これはあくまでスクリーニングで正常の場合が含まれていますので、眼科専門医の目でさらに診断することが必要です。

視野の障害を早い時期に発見

視野が欠けても、初めのうちはほとんど気がつきません。緑内障がかなり進行して視野の欠けに気がつきます。また視野が大きく欠けてから治療を始めると進行を抑えることが難しくなりますので、早期発見が大切です。眼科で精密に視野を検査してもらいましょう。

眼圧も総合的に判断が必要

正常な眼圧(10 ~ 21mmHg)でも視神経がおかされる人がいて、正常眼圧緑内障といいます。また、眼圧は一日のうちで変動します。健康診断などで眼圧が正常でも、安心はできません。

目の構造

眼圧が高くなると視神経がおかされます

糖尿病の人に起こる病気

糖尿病はインスリン作用の不足により、血糖値が上がってしまう病気で、高血糖の状態が長く続くと、網膜の血管が弱くなって、小さな出血やむくみなどが出てきます。進行すると、硝子体に出血したり、網膜剥離を起こすなどして視力が低下し、ついには失明にまで至ります。

発症までに時間がかかり、初期は自分では分からない

糖尿病網膜症は糖尿病になってから、何年も経ってから発症します。けれども、糖尿病にいつからなったのかがはっきりしないことも多いですし、網膜症の初期には自覚症状がほとんどありませんから、安心は出来ません。早くから、定期的に眼底検査を受けて、初期から自分の網膜の状態を知っておくことは、大切です。

進行状態も自分では分からない

血糖のコントロールがよいと糖尿病の進行が遅く、網膜の障害も途中で安定することもあるのですが、視力低下や飛蚊症などの自覚症状が出てからでは、手遅れになる恐れがあります。
糖尿病網膜症の人は、定期的に眼底検査を受けて進行状態をチェックしてください。

眼底の中央にある黄斑部が障害される病気

網膜はフィルムにたとえられますが、場所によって見え方が異なり、一番良く見えるのは眼底の中央にある黄斑部です。年をとって黄斑部に障害が起き、ゆがみ、視力低下を生じるのが加齢黄斑変性で、最近増加しています。

黄斑部

眼底の中央が黄斑部です

意外に気がつかない初期症状

ものがゆがんで見えたり、視野の真ん中が黒ずんで見えたりしたら、この病気が疑われます。でも、片目だけの症状だったり、わずかな障害では、なかなか気づかないことが多いのです。とりあえず、片方の目を隠して、片目ずつチェックすることが有効です。
少しでも、気になったら眼科専門医の精密検査を受けましょう。眼科専門医の目で眼底黄斑部の精密検査をします。必要に応じて、蛍光眼底造影などで早期診断ができるようになりました。早めであれば、新しい光線力学療法、薬物療法などが効果を上げています。

ただの飛蚊症と放っておくとなかには...

黒いものがちらちらすると「それは年のせいの飛蚊症だから、心配無い」と片付ける方が多いですが、目の前を黒いものが飛ぶ飛蚊症は、硝子体の濁りが原因です。心配のない場合がほとんどですが、ときには、網膜剥離の兆候であることがあります。

網膜剥離は放っておけない怖い病気

網膜に裂け目ができると、液状になった硝子体がそこから入り込んで網膜がはがれ、視野が欠けたり視力が低下します。これが網膜剥離で、加齢によっても起こります。裂け目ができるときに、硝子体の変化があって飛蚊症に気がつくことがあるのです。

早期発見が大事

ごく初期の網膜剥離は外来でのレーザー治療で食い止められる場合があります。網膜機能は剥離している期間が長くなると低下します。たとえ手術になっても早く直すことが、後遺症を軽くすることに繋がります。黒いものに気がついたら早く眼科を受診して、網膜剥離が起きていないか確認してください。

網膜剥離

一種の老化現象で、誰もがなる

加齢により水晶体が白く濁るために、目がかすんで見えにくくなる病気です。水晶体の濁りは一種の老化現象ですので、誰でも白内障になるのですが、個人差が大きく、濁りが強くなると症状が出ます。

治療の基本は手術

濁った水晶体は、手術で眼内レンズという人工の透明なレンズに取り替えることが出来ますので、あわてることはありません。

早期に診断を受けると

進行を遅らせる可能性のある点眼治療があります。程度を知っておくと、手術時期を配慮して旅行などの活動予定を立てることが出来ます。逆に、白内障だからいずれ手術をすれば大丈夫と高をくくっていると、別の病気のこともあります。手遅れになっては大変ですから、早期検査は大事です。

眼内レンズ

水晶体を眼内レンズに置き換える

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絵 清水 理江

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