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子どもの遠視
子どもの目は、視る機能が発達の途上にあり未熟です。そのため、この時期に視る機能を障害する要因があると、発達が妨げられてしまいます。
その要因の代表的なものの一つが遠視で、早期に発見し、適切な管理を行うことが必要です。
しかし、眼科医の説明が不十分であったり、ご両親をはじめ、ご家族に正しく理解していただけないために、ときに治療を速やかに進められないことがあります。
このホームページが遠視への理解を深め、ご家族と医師が一緒になって、お子さんの目の健やかな成長を見守っていくための、お役に立てば幸いです。
患者 | 目は、どのようなしくみで、ものが見えるのですか。 |
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医師 | 目は、カメラと同じようなつくりをしています。私たちがものを見ようとすると、外からの光は、角膜や水晶体でピント合わせの作用を受けて曲がり、網膜に投影されて像を結びます。その情報が視神経を通って脳に伝えられると、「見えた」と感じられるのです。 |
患者 | 目になにか特別な病気がなくても、よく見える人と、そうでない人がいるのはなぜですか。 |
医師 | 見ているものの像が、ちょうど網膜面でピントが合う状態を正視といいます。このとき、ものははっきりとよく見えます。 しかし、網膜面からずれてピントが合ってしまうと、網膜面上の像はピンボケとなってはっきり見えません。これが屈折異常で、網膜面より前でピントが合う目を近視、後ろでピントが合う目を遠視といいます。 ピントが合う位置を調整するために、近視では中央の薄い凹レンズを、遠視では中央の厚い凸レンズを通してものを見ると、よく見えるようになります。 |
患者 | なにが原因で屈折異常になるのですか。 |
医師 | 遺伝的なものが関わることもありますが、多くの場合、特別な原因はありません。お子さんによって体格のちがいがあるように、眼球の長さとか、角膜や水晶体の屈折力が異なるために、屈折異常になるのです。 |
<目の構造とカメラ>
患者 | 近視は近くがよく見える目、遠視は遠くがよく見える目とききますが。 |
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医師 | 遠視は、ほんらいは遠くも近くもボンヤリして見にくい目です。 |
患者 | しかし、家庭での生活をみていて、子どもに見にくそうな様子はありません。 |
医師 | 生まれたときから視力の悪いお子さんは、それがあたりまえと思っているので、自分から見えないとはいいません。 また、私たちの目にはピント合わせをする力(調節力)があり、特にお子さんでは、この調節力が大きいのです。それで、遠視があっても、不自由しない程度に見えていることも少なくありません。 |
患者 | では、子どもの遠視では、症状はみられないのですか。 |
医師 | 日常生活に不自由がなさそうでも、視力測定をすると、視力が十分でないことがわかります。 また、視力がある程度よい場合には、目は常にピントを合わせようとして水晶体を厚くする努力をしなければなりません。そのため、疲れやすく頭が痛くなったり、読書やお絵かきなどの細かい作業が長つづきしない、集中力に欠けるなどの症状がでます。 ピント合わせをしようと努力すると同時に、内斜視(寄り目)になる場合もあります。 |
<遠視と目の調節>
患者 | 弱視とはどのようなものですか。 |
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医師 | なんらかの原因で視力の発達が妨げられた状態を、弱視といいます。 |
患者 | 遠視があると、なぜ弱視になるのですか。 |
医師 | お子さんの視力は、生まれた直後はお母さんの顔がやっと見える程度です。それが、生後ものをしっかり見ることで網膜の中心部が刺激され、視力が発達していきます。 しかし、ある程度以上の遠視があると、いつもピンボケの像しか見ていないことになって刺激が足りず、視力が十分に発達しないのです。 |
患者 | 弱視にはどのような種類がありますか。 |
医師 | 遠視によっておこる弱視には、二種類あります。両目の遠視が同じ程度の屈折異常弱視と、遠視の程度が左右で異なり、遠視が強い方の目におこる不同視弱視があります。 このほかに、遠視以外の原因による弱視として、斜視におこる斜視弱視や、眼帯などで目をふさいだためにおこる遮蔽弱視があります。 |
患者 | 弱視は治りますか。 |
医師 | 遠視による弱視は、適切な治療を行えば、多くは良好な視力が得られます。そのためには、早期発見、早期治療が大切です。 |
患者 | 遠視があると、どうして斜視になるのですか。 |
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医師 | 私たちの目は、遠くから近くへと視線を移すときに、調節力をはたらかせてピントを合わせ、それと同時に、両目の視線を少し内側に寄せます。 ところが遠視の人は、遠くも近くもピンボケなので、遠くを見ているときからすでに調節力をはたらかせなくてはなりません。このとき調節にともなって、両目の視線も寄ってしまう人があり、内斜視になるのです。 |
患者 | 斜視になるとどのような困ることがあるのですか。 |
<内斜視>
医師 | 私たちの目は、少しはなれて横に二つついているため、左右の目は少しちがった角度でものを見ることになり、これを頭のなかで一つにまとめてとらえると、立体感や遠近感が生まれます。これを両眼視機能といいます。 しかし斜視があると、両目で一つのものを見ることができないので、両眼視機能が発達しません。 また、途中から斜視になると、ものが二つに見えることもあります。もちろん斜視は、外見上も問題になります。 |
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患者 | 子どもの遠視を見つけるには、どうすればよいですか。 |
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医師 | 遠視が原因で斜視がある場合には、ご家族の方が気づく場合も少なくありません。また、乳幼児健診で見つかることもあります。 しかし、外見に問題のない弱視、特に片目の弱視については、視力を測定しないとわかりません。三歳児健診や就学時健診で行われる眼科の検診を、きちんと受けることが大切です。 |
患者 | 三歳児健診の視力検査では、どのようなことをするのですか。 |
医師 | 健診の前に各家庭に視力検査用の視標が送られてきますので、ご家庭で必ず片目ずつの視力検査を行い、結果を問診表にかいてください。 健診ではこれを参考に、視力不良が疑われるお子さんを拾い上げ、精密検査のための眼科受診をすすめます。自治体によっては、健診の会場に視能訓練士(眼科検査員)がいて、視力検査や屈折検査を行っているところもあります。 |
患者 | 三歳ではまだ、視力検査は難しいのではないですか。 |
医師 | ちょっと練習をすれば十分可能ですが、むしろお子さんがふざけてしまって、検査ができないということが多いようです。ただ、ふざけるお子さんをみていますと、片方の目がよく見えなくてふざけている傾向がありますので、注意が必要です。 |
患者 | 遠視を治す方法はありますか。 |
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医師 | 遠視そのものを治す方法はありません。また遠視があっても、視機能に問題がなければ病気ではないので、治す必要もないのです。 |
患者 | 治療が必要なのは、どのようなときですか。 |
医師 | 斜視や弱視をともなっている場合や、メガネをかけないと視力が悪く、日常生活に不便な場合です。 |
患者 | 治療はどのようなことをするのですか。 |
医師 | 基本はメガネをかけることです。 |
患者 | メガネはどこで作るのですか。 |
医師 | 眼科で精密な屈折検査を受け、処方箋を書いてもらってから、眼鏡店で作ってください。 |
患者 | 精密な屈折検査とはどのようなことをするのですか。 |
医師 | 子どもは調節力が強いので、検査のとき目が緊張してしまい、そのままでは正しい屈折度がわかりません。一時的に調節を麻痺させる点眼薬をつけて、検査を行う必要があります。 この場合、薬の効果を十分に高めるために、ご家庭で一週間ほど点眼していただくこともあります。 |
患者 | メガネはすぐにかけなければいけませんか。 |
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医師 | 視力や両眼視機能が発達するための感受性は、生まれた直後から三歳位までが最も高く、その後は次第に低下して、十歳前後には消えてしまいます。視機能の発達には、感受性の高いときに目のピントが合うことが重要で、「メガネは大きくなってから」では遅いのです。 |
患者 | メガネは、テレビを見たり、本を読むときだけかければいいのですか。 |
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医師 | 遠視のメガネは、お風呂に入ったり、寝るとき以外は、いつもかけていることが原則です。しばらくメガネをはずしていると、目が調節をはたらかせて度が合わなくなり、メガネがかけにくくなってしまいます。 |
患者 | 遠視のメガネは、将来、はずせるようになるのですか。 |
医師 | まれに、大きくなるにつれて遠視が減り、メガネがいらなくなる人もいます。しかし、その遠視の減る程度や時期は、人によってさまざまです。目標はメガネをはずすことではなく、よく見えるようになることです。 |
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絵 大内 秀
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